細字の誘惑〜万年筆生活
9月のはじめにParker Duofold Cloisonneを安く買った話は前に書いた。この万年筆のペン先はエクストラポリッシュドニブと呼ばれる胡桃のチップで56時間磨き上げた最初から書き味のいいものだったが、Mしか選択肢がなく、日常的に実用万年筆として使うには太すぎたため、すぐにCentennial用のXFのペン先に交換して使っている。カリカリとした引っかかりはあるが、同軸の真ん中より後ろを持って力を入れずに書く私にはあまり苦にはならなかった。小さな字で手帳をつける私には妥協せざるをえない選択だった。
何度も書いた気がするが、フルハルターで出くわす他の人たちは店頭で試し書きのできる森山スペシャルの書き味にうっとりして太いペン先を求めていく。私も同様で、Bだの3Bだのというとてつもない太字にはしなかったが、数年前に買ったPelikan Toledo M900をMにしてもらった。ところが、実際にスケジュラーなどで細かいメモをとろうとするとM字では太すぎ、当然インクもたっぷり出るので、書き終えてもしばらくページを閉じることができず、結局は滅多に書かない手紙や、いたずら書きをしてペン先のヌラヌラとした感触を味わうくらいしか使わない。確かに高級な万年筆の、それも大きめのサイズのものを買って細字を選ぶというのは「貧乏性」の私にはできなくて、つい中字以上の太さにしてしまうのだが、結局は使えないということが昔から何度もあったのだ。
そんな私が細字にこだわりだしたのはLamy Safariを集め出したころからだった。最初は万年筆画を書くために安い、けれども気に入ったペンがほしくてSafariを選んだのだが、このEFは書きやすかった。ノートをとるのも、本に書き込みをしてしまうのも万年筆でできる。最近いよいよ嫌いになってきたボールペンを使わないで済む。あとで消そうと思うもの以外ではシャープペンや鉛筆も使わなくなった。そうしてみると、せっかく買った高級万年筆もいよいよ使わない「お宝」になってしまうのだった。だから、Parkerのクロワゾネはせっかくの書きよいM字のペン先をしまって、極細を手に入れたのだった。ここまでくると今度は森山さんが3Bのニブから研ぎ出してくれたMを外して、ToledoにEFのペン先をつけてみたくなった。Pelikanのペン先は回すと簡単に外れるので、ネットで売られていた800用のEFニブを買った。届く前から、Toledoのペン先を外し、しまうことになる森山スペシャルのペン先も同軸もキャップもしっかりと洗い、準備をしておいた。書き味が落ちることは覚悟の上、ペン先のカリカリは時間をかけて自分流のペン先に変えることができる。そのためにも日常的に実用万年筆として使い込むことが必要なのだ。一番心配していたのはインクフローが悪いペン先だった場合だ。インクフローの悪い、たとえば、書き出しの時にインクが出ない、ある方向へペン先を滑らせると掠れる、という万年筆の調整は私にはできない。書き味の良い、悪いということはペン先が滑らかで最低限の摩擦感しかないということとインクフローが適度であるという2つから成り立っている。店頭で試すときに陥る失敗は後者の判断で、インク瓶にペン先を浸してから試し書きしてもインクフローについてはわからない。店で非常に書きやすいと思って買ってきて、実際にインクを入れて(もしくはリフィルカートリッジをつけて)書き出すとインクの出が悪くて書きやすさどころではないということがよくあるのだ。
届いたPelikan800用のEFニブは、入学祝いにあげるような国産の万年筆なら4本くらい買える値段だったが、Big Toledoの定価から考えたら安いものである。インクフロー、カリカリ感などのない当たりのペン先だった。ということで実用万年筆が2本増えた。これでLamyの出番が減った。モールスキンでも裏写りしなくなった。やっぱり万年筆は細字がいい、と満足しながらノートをとっている。いざとなったら書き味が抜群のM字のペン先に戻れる、というのもいい。






































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