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2006年10月15日 (日)

命拾い

Haitaka 土曜日は曇り空で冬の始まりのような天気だった。前の深夜に着いて、ちょうど車の中で聞き続けてきたCDの音が耳から離れずにギターを弾き出してしまったので寝るのが遅くなり、この朝は二人とも遅くまで寝ていた。起きたのは私が先で、ゾクッとしたのですぐにストーヴを焚いた。後から起き出したFERMATAがコーヒーといつも焼きサンドウィッチを作って食べだしたのは昼近くなっていた。ストーヴの前に張りつくように、私が西のほうを向き、FERMATAが東のほうを向き、お互いの後ろにシンメトリックに作られている窓の外の秋の景色を見ながらサンドウィッチを食べていた。傾斜地に立っている家なので、FERMATAの見ている東側は目線がそのまま林から道路に続く高さなのだが、私の目線は森の木立の上の方になる。

 私のほうからは狭い庭の空間を飛び越えて林が見える。サンドウィッチの最後の一切れを口に入れようとしたとたん、その空間を滑空してきた物体が私に対面するはめ殺しの窓に向かってきた。あっと思う間に左側の物体は急上昇し、右側の物体が窓に激しくぶつかり、空洞のような私の家にドンと叩くような音が響いた。かなり大きな鳥が窓ガラスにぶつかった音だということはすぐにわかった。何も見ていなかったFERMATAはビクッとして振り返った。私はサンドウィッチをくわえたまま、窓のほうに走っていった。ギャーという鳥の鳴き声が林に響いた。窓から2m程下の庭に鳩を少し大きくしたくらいの灰色の鳥が落ちていた。正直なところたいていの生き物は嫌いではないが、死骸は嫌いだ。
「首の骨でも折ったのかな?」とFERMATAはすでに死んだものとしてその鳥を見ていた。確かに全く動かず、雑草の生えた庭に「倒れて」いた。私はFERMATAに片づけるのを命ずるつもりだったし、FERMATAのほうも自分がやらされるのだろうと覚悟していたようだった。

 ところが数分後その倒れた鳥が立ち上がった。キョトンとしてあたりを見回している。脳しんとうを起こして倒れていただけのようだったが、立ち上がっても足を踏ん張ったまま顔だけ左右に動かしていた。もう一度書くが、私は死骸は嫌いだがたいていの生き物は好きなので、デッキから庭へ階段をそうと下りていった。頭上の大きな栗の木の上で先ほど窓の直前で急上昇していったたぶん夫か彼氏に違いない鳥がギャーと鳴いた。「頭を狙われないようにね」とデッキの上からFERMATAの声がした。

 その鳥は体が鳩くらいで、全体的に灰色をしており尾羽に4本の明るいうす茶色の線が入っている。顔は猛禽類独特の鋭さがあり、嘴は鷲鼻のように下に曲がっている。胸は私の好きなセーターのような暖かそうなベージュと灰色の柄になっている。足は鮮やかな黄色で小さいけれどがっしりと地面をつかんでいる。白みがかった薄い灰色の頭の毛がホワホワと見えるのはまだ幼い鳥だからか、あるいは窓ガラスにぶつかって乱れているのかわからない。とにかく至近距離に近づいてそれくらいの観察をし、何枚も証拠写真を撮られても動かず、ときおり私を睨みつけるだけだった。これも倒れていたのと同じくらいの時間だったが、目眩から覚めたのか、もと来た林のほうへ一直線に飛び立っていった。上の写真は飛び立つ前のまだ、目眩の最中の姿。

 ま、私もFERMATAも葬送の儀を執り行わずに済んでホッとした、というただそれだけの話である。
ちなみに部屋に戻って鳥類図鑑を調べると、ハイタカ(灰鷹)の雌だった。木の上で私を威嚇したのはたぶん雄のほうだろう。最近、野鳥が私の作った餌台にやってこないと思ったら、こういう鳥が近くに巣でも作りだしたからだろう。ハイタカは私の見たくらいの大きさが成鳥の大きさなのだが、野鳥を餌にしていると図鑑にあった。森では厳しい淘汰が行われているのだろう。そのハイタカにとっては我が家のような異物が敵の一つなのだろうが… 命拾いした彼女に後遺症がでないといいな、と思っている。

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