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2006年2月 6日 (月)

厳しい冬

 今年の冬は2002年夏から八ヶ岳南麓に通いはじめて一番寒い。12月初旬の雪以来、大雪こそないが(そういっている今夜あたりは10cm以上積もっているようだけれど)、日中でも氷点下の真冬日が続いている。底をつきだした薪を買い足すのは簡単だがお金もないし、悔しいし… というわけで今回は林の中を歩き回って倒木を見つけては手入れが悪いために切れ味の良くなくなってしまっているチェーンソーで伐っては家まで運んでいる。ただ、太い木ではなく細い木が中心で、太めの枝なども集めている。お金を出して買う立派な薪とは違って細くて半分スカになっていたりする木だから干していないのに燃える。皮が剥け、白い木肌が見える動物の骨のようになった木を惜しげもなくストーヴに放り込む。木自体が冷えていたり凍っていたりするから買った乾燥薪のように即座に燃え出さないが、ゆっくりと白っぽい木が変色して焦げて茶色くなり、発火点をこえるとパッと炎が上がる。オレンジの炎が木から上がるのではなく、青や赤の炎が木から離れた宙で揺れる。何度か北極回りのジェット機から見たオーロラのように… 

 しっかりとした薪ではないから燃え出すと木自体がゆらゆらと揺れだし、赤い興(おき)になっておち、次々と積み上がる。それからが長く、熱量を発してくれる。静かな余生を楽しむ老人の最晩年のように赤い色が震えている様子は、悲哀と安らぎを同時に感じさせる。興の美しさをしばし楽しんだあと、次の枯れ枝をくべる。こうして短い人生のような、枯れ枝の燃える生涯のドラマを何度も見続ける。赤々と燃える母親の懐に抱かれた冷たい木々は赤子のように暖められ、突然自我を確立する青年期のように燃え上がる。ストーヴに貼り付けてあるバイメタル式の温度計がいったん200℃くらいに下がり、再び350℃〜に上昇していく。これまでなら、いったん暖まった室内の空気は暑くなる一方で、薄着になっていくのだが、今年はそのたびに室内の空気の温度も変化するくらいに寒い。そうやって色と熱の競演は小さな鋳物のストーヴの中で何度となく繰り返される。私たちはそのストーヴの前から離れられずに手をかざしている。

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