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2005年6月 5日 (日)

森にさす光

bedroom寝室の北側の窓から眺める森の景色が好きだ。背の高いカラ松の間に、ナラや栗やミズキが点在し、夏になると暗く日翳が増えるのだが、高い木立の上から射し込む光が木や葉に当たり茶色や緑の、静かな陰影を際だたせて輝いてみえる。ベッドに横になるとちょうど見える「一枚の繪」だから、来客はこの繪を堪能する機会がない。私は寝たきり老人のように2個立てかけた枕に肩から上をもたれかけさせて、日長、本を読んだり何かかいたりコーヒーを飲んだり、下手をするとそこで簡単な食事をとったりもする。
 
直線距離にしたら50mくらい先にうちから最も近いお宅があり、冬の間はそのお宅の屋根か壁か光を反射して白く見えるのだが、若葉のころからだんだん見える部分が減っていき、今は完全に視界から消えている。

低灌木についた若葉はやっと届いた光の残りでわずかに輝き、森の中を静かに吹き抜けていく風=空気の流れに揺れている。斜めに開いた細長い窓から高い梢を渡る風のざわめきと甲高い鳥の声が聞こえてくる。太陽の移動にともなって光を反射するカラ松が1本ずつずれていき、いつの間にか夕暮れになる。気がつくと幾頁も読み進んでいない本が顔の上にあり、開いた頁の真ん中に鼻やおでこの脂染みがうっすらとついている。眠っている間に家内が窓を閉じてくれてあるが、カーテンは開いたままで暗い森を見ることができる。そして、単純なフォルムのスタンドを灯したとたんに森は消えてなくなる。と同時に今度は明かりをめざしてやってくる蛾や虫たちがはめ殺しの窓にあたって音を立てる。

北東の角に位置するこの部屋は、更地だったときに地鎮祭の祭壇が作られた場所だ。神仏を信仰しない私は、工事にたずさわる大工さんたちのためにどうしてもしてほしい、と説得されて、その意見に従ったのだが、もしも神々が宿るとしたらその基地は私の横たわる枕元にあるはずだ。私はそれらの神々が神道のそれではなく、森の精霊であったりヤモリであったり…と想像している。

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森の生活」カテゴリの記事

コメント

”森の光”がいいですね。
緑の葉っぱに濾過されて来る光ですね。 森に帰りたがる気持ちが よく解ります。

私は山小屋を持っていなくて、松林の中の山小屋に泊まりに行きますが、、、
窓から見える光の色が違うなと  今、思います。

投稿: takako | 2005年6月30日 (木) 11:53

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