当日参加者57名。5つの班に分けてそれぞれに班長、副班長が付き、全体を統率する隊長が付く。これだけの大パーティが登山をするということはこれくらい大変なことなのだ、と朝の有明山神社で思った。
私たちは第4班、班長はいかにも山慣れた青年久保さん。神社で受付を済ませ、お守りと鈴と水をもらって、明け初める神社に参拝した後、軽トラックに分乗して、黒川の表参道入り口へ向かう。表参道入り口から300mほど奥まで林道が続き、そこまで軽トラが次々と入っていった。
4班が出発したのは4:55。雲が覆っているが、雨雲ではない。途中2回の小休止を挟んで妙見滝に着いたのが6:54。地形図上で動くGPSを見ると相当の距離を移動したという感じだった。体も調子いい。

ここからが本当の登山です、と久保班長が言った。ここまでも結構きつかったのだが… ところがその言葉はすぐにも本当だとわかった。鎖やロープを使って登っていく。次の休憩地白川滝7:44。ここで長目の休息。FERMATAは滝の水を汲んだ。

ここで長い時間止まったのは前の班が順々に登り出すのを待っていたからでもある。何せ、ここからの急登坂はここまでの比ではなかった。休憩直後の急登りはこのあとずっと続いた。鎖、ロープ、梯子ありとあらゆるものを使って壁のような山を這い上がっていくしかないのだ。

FERMATAは最初からへっぴり腰で、どんどんと体力を消耗した。班のみんなはFERMATAの登りに合わせて足踏みをしながら登っている感じ。途中の休憩地点で靴を脱ぐと、靴の中から汗がコップ半分くらい流れ出た。寝る前などに体がびしょびしょになるくらい汗をかくようになったのは、乳がん予防のホルモン剤を飲むようになってからだが、足の裏の汗腺まで活発になっているようだった。白川滝から休憩を挟んで、ようやく松川方面からの稜線とぶつかる落合に到着したのが9:46。それはもうとてつもない登りの連続だった。

ここまで2名ほどが妙見滝からリタイアして下山しているが、ここまで着てしまうともう登るしかない。松川側へ連れて下りてくれる人がいないのだ。そしてFERMATAも、そして私ももう相当へばっているを察知した隊長畠山さんがそこから私たち二人について、5つの班とは別に登ってくれることになった。畠山さんは北アルプス登山案内人組合連合会会長をしている体の大きないかにも頼りがいのある方だった。私たちは北アルプスの案内人のトップに引っ張ってもらってこの登山を進めることになった。
ところが、稜線に出たとはいえ、この先、地形図上あとわずかに見える有明山山頂の北岳までがさらに半端でない登り、すでに5時間近く経過しており、二人ともすっかり憔悴しきっている。落合を10:00過ぎに出発して、3回休憩をして、永遠に着かないのではないかと思われたステンレス製の鳥居のある北岳に着いたのが12:00ちょうどだった。登りだして7時間が経過していた。

前の班の人たちはここから中岳の奥社に行って神主さんの祝詞を聞いて、奥社登拝をし、さらに南岳まで往復したようだが、私たちは1時間北岳ベンチで体を休めていた。だから奥社登頂はできなかった。頂上(2268m)はガスが出ていて北アルプスも安曇野も何も見えなかった。私たちは北岳の古い祠に参拝をした。

iPhoneのバッテリがなくなりかけて写真はここから撮れなくなった。頂上のしゃくなげはもう終わりの花がわずかに咲いていた。1:15他の班の人たちが南岳のほうから戻ってくる前に、私たちは中房温泉に向けて、プロの畠山さんと下り始めた。FERMATAにとってもっとも不得意の下り、しかもそれは登りだとしたらものすごい急登なのだろうと思われる下りで、かろうじて表示するGPSがなかなか進まない。そのうち、後ろから他の人たちが追いついてすべての人たちに先に行ってもらい、FERMATAは畠山さんに足の付く位置を指摘してもらいながらやっとのことで下っていく。それでも足がいうことを利かなくなって畠山さんの後ろからザックのベルトにつかまって下りたり、逆に畠山さんがFERMATAのザックのベルトをつかんだりしながら、少しずつ下りていった。この急な下りもいつまでも終わらず、気が遠くなるようだったが、畠山さんは黙々と私たちを引っ張りつづけ、なかなか休もうとはしなかった。時間は4時を回り、今回の登山の下山予定をとっくに過ぎていた。中房川の音が聞こえだしても、下を見下ろすとどこまでも深い谷が見えるだけ。
でも神は乗り越えられる試練しか与えない。私たちは、夕方5時15分に有明荘に着いた。すでに入浴の時間は過ぎていたが、硫黄の匂いの温泉に入らせてもらい、迎えのバスに乗り、有明山神社に帰りついた。その後の直会(なおらい)ではみんなからよく頑張ったねと言われた。夜9時半まで飲んで、ふらふらと重たい荷物を持って歩いて家まで帰った。
パーティのすべての人たち、そして何よりもふたりじめしてしまった隊長の畠山憲一郎さんに感謝します。この山には確かに神々が棲んでいる、と思う。乗り越えるための試練の大きさは神が与えたものだとつくづく感じました。
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